75.夏がきた

夏がきた

羽尻利門 2017.6 あすなろ書房

 

吾子ハマリ度 ★★★☆☆
親の偏愛度  ★★★★☆
うちで活躍した時期 4歳~
吾子が4歳の夏のはじまり時分に、夏を感じる絵本をいろいろ物色した。そのときの代表格の一冊。ここに描かれる、小学生が夏祭りの準備を手伝う風景は、私でさえ経験したことのない昭和の風景だけれど、セミの鳴き声や夕立の音や匂いまでもが感じられるような見事な絵で、ここに永遠の夏が封印されている、日本の集合記憶のような一冊だと思う。


他に、夏を感じる絵本でお勧めしたいのは、夜祭の縁日の情景を描いた『わにわにのおでかけ』。

わにわにのおでかけ (幼児絵本シリーズ)

さらに、これは夏を描いているわけではないけれど、水が冷たいその清新さをこれほど絵で描けるのかと驚いた『14ひきのせんたく』。このシリーズは、季節を描かせて天下一品だけど、私はこの一冊がとりわけお気に入りです。

14ひきのせんたく (14ひきのシリーズ)

夏の夜の怪談気分を味わえる一冊として『バスザウルス』。これも夏の絵本というわけではないと思いますが、五十嵐大介さんの絵が、夏の夜の深さを、そこで繰り広げられる、バスが恐竜みたいに歩き出す奇妙さを、画力によって現前せしめていて、怖いのが嫌いな幼児とも楽しめる一冊になっている。

バスザウルス (亜紀書房えほんシリーズ〈あき箱〉4)

最後に、『のらいぬ』。これも夏の絵本、と銘打たれているわけではないけど、晴れ渡った砂丘で繰り広げられるミニマルなストーリーは、夏の陽炎か蜃気楼のような不思議な浮遊感がある。夏の午睡に見た夢のような一景が忘れがたい一冊。

のらいぬ (至光社国際版絵本)